ネットワークの基本を学び始めると、「サブネット」や「VLAN」という用語に必ず出会います。
どちらもネットワークの分割に関係していますが、役割や仕組みがまったく異なるため、混同しがちです。
本記事では、サブネットとVLANの仕組みや特徴、メリット・デメリットをわかりやすく比較しながら、それぞれの違いや使い分け方について詳しく解説します。
サブネットの基本概念
サブネットは、1つのIPネットワークを複数の論理的なネットワークに分割する仕組みです。
主にルーティングやアドレス管理の効率化を目的として使われます。
特徴
- IPアドレスとサブネットマスクを使って分割
- ネットワークのアドレス空間を効率よく使える
- ルーティングの単位として機能する
- 物理的なネットワーク構成はそのままでもOK
たとえば、「192.168.1.0/24」のネットワークを「192.168.1.0/25」と「192.168.1.128/25」に分けることで、1つのセグメントを2つに分割できます。
VLANの基本概念
VLAN(Virtual LAN)は、物理的なネットワーク構成に関係なく、スイッチなどの機器上で仮想的にLANを分割する技術です。
同じスイッチに接続されていても、異なるVLANに属する端末同士は直接通信できません。
特徴
- レイヤ2(データリンク層)での分割
- 物理構成にとらわれず論理的にグループ化
- ブロードキャストドメインを分離できる
- セキュリティやトラフィック制御に有効
例えば、部署ごとにVLAN10(営業部)・VLAN20(総務部)などを設定することで、同じ建物内でも論理的にネットワークを分離可能です。
サブネットとVLANの違いを比較
比較項目 | サブネット | VLAN |
---|---|---|
ネットワーク層 | レイヤ3(ネットワーク層) | レイヤ2(データリンク層) |
分割方法 | IPアドレスとサブネットマスク | スイッチ上でVLAN IDを設定 |
目的 | アドレス管理、ルーティングの効率化 | トラフィックの分離、セキュリティ向上 |
通信制御 | 異なるサブネット間はルーターが必要 | 異なるVLAN間はレイヤ3スイッチやルーターが必要 |
物理的依存 | 物理構成に依存しない | 物理構成に縛られない(仮想的) |
使用例 | 支社ごとにIP範囲を割り当てる | 部署ごとにネットワークを分離する |
よくある混同ポイント
サブネットとVLANは「ネットワークの分割手法」という共通点があるため、初心者には混乱しやすい要素です。
しかし、サブネットはIPアドレスレベル、VLANは物理接続を論理的に分割する手法という明確な違いがあります。
混同しやすい理由
- どちらもネットワークを分ける概念
- どちらも「異なるグループ間はルーティングが必要」
- 現場では両方を併用することが多い
たとえば、VLANでネットワークを分けても、各VLANに異なるサブネットを割り当てるのが一般的です。そのため、両者を正確に理解しておく必要があります。
サブネットとVLANの使い分け
実際のネットワーク設計では、サブネットとVLANは役割に応じて併用されます。
どちらを使うかは目的や構成、セキュリティ要件によって変わります。
サブネットが適しているケース
- 複数のネットワークにIPを効率的に割り当てたい
- ルーティング制御を行いたい
- グローバルアドレス設計が必要な場合
VLANが適しているケース
- 部署単位でトラフィックを分離したい
- 物理的に離れていても論理的に1つのネットワークにしたい
- セキュリティ強化のためにユーザーグループを分けたい
導入時の注意点
VLANやサブネットを導入する際には、それぞれ以下のようなポイントに注意しましょう。
サブネット導入時の注意点
- IPアドレスの計画的な割り当てが必要
- ルーティング設定ミスによる通信不具合
- 機器や構成の変更時に再設計が必要になる可能性
VLAN導入時の注意点
- VLAN設定ミスによる通信遮断
- 異なるVLAN間の通信にはL3スイッチなどの機器が必要
- ポートのタグ設定(トランク/アクセスポート)に注意
まとめ
サブネットとVLANは、どちらもネットワークの設計や分割に欠かせない技術です。
機能や目的は異なりますが、どちらも使いこなせることで、より安全で効率的なネットワーク環境を構築できるようになります。
特に企業ネットワークや大規模なオフィス環境では、サブネットとVLANの両方をうまく活用することが重要です。
本記事を参考に、自社ネットワークの最適化やセキュリティ強化に役立てていただければ幸いです。