プログラミングやコンピューターの仕組みを学ぶ中で、「プロセス」と「スレッド」という言葉に出会ったことがある方も多いでしょう。
どちらもコンピューター上での処理の単位ですが、それぞれの意味や役割には明確な違いがあります。
本記事では、プロセスとスレッドの定義、仕組み、違い、使用例、使い分けのポイントまでを初心者向けにわかりやすく解説します。
プロセスとは?
プロセスとは、実行中のプログラムそのものを指します。
OS(オペレーティングシステム)上で、プログラムが実行される際に割り当てられる独立した実行単位です。
プロセスの特徴
- 独立したメモリ空間を持つ
- プロセス間では直接的なメモリ共有ができない(通信にはIPCが必要)
- クラッシュしても他のプロセスに影響しにくい
- リソースの割り当てが多くなるため起動コストが高い
使用例
- Webブラウザとエディタを同時に起動すると、2つのプロセスが実行されている
- OSが各プロセスをスケジューリングしてCPUリソースを割り当てる
各プロセスはお互いに独立しており、他のプロセスのメモリ空間にアクセスすることはできません。
スレッドとは?
スレッドとは、プロセスの中で実行される最小の処理単位です。
一つのプロセス内で複数のスレッドを実行することにより、並列処理が可能になります。
スレッドの特徴
- 同じプロセス内のメモリ空間を共有する
- スレッド間で変数やデータの共有が容易
- 一つのスレッドがクラッシュすると、プロセス全体に影響を与える可能性がある
- 起動が高速でリソース消費も少ない
使用例
- Webブラウザでタブごとにスレッドが使われる
- ゲームで「描画」「音声」「入力処理」などを別スレッドで同時進行
スレッドは軽量であり、マルチコアCPUの恩恵を受けて効率的な並列処理を実現します。
プロセスとスレッドの比較表
項目 | プロセス | スレッド |
---|---|---|
定義 | 実行中のプログラム単位 | プロセス内の処理単位 |
メモリ空間 | 完全に独立 | 同一プロセス内で共有 |
リソース消費 | 多い | 少ない |
安全性 | 他に影響しにくい | 障害が波及するリスクあり |
起動コスト | 高い(初期化に時間がかかる) | 低い(高速に生成できる) |
主な使用目的 | アプリケーションごとの独立実行 | 同一アプリ内の並列処理 |
並列処理と並行処理の違い
プロセスやスレッドの違いを理解するうえで、よく混同されるのが「並列処理(Parallel)」と「並行処理(Concurrent)」という用語です。
並列処理とは
- 複数の処理を同時に実行すること
- マルチコアCPUを活用した物理的な同時実行
- スレッドによる実装が多い
並行処理とは
- 複数の処理を切り替えながら順番に実行すること
- 見かけ上は同時に動いているように見える
- シングルコアCPUでも実現可能
並列と並行の違いは、CPUのコア数やスケジューリングの仕方により異なります。
プロセスとスレッドの使い分け
実際の開発においては、プロセスとスレッドを目的に応じて使い分けることが重要です。
プロセスを選ぶ場面
- 安定性や安全性を重視する場合
- 別アプリケーションとして分離したい処理
- OSレベルでの高い独立性が必要な時
スレッドを選ぶ場面
- 同じアプリ内での高速な並列処理
- 軽量な処理を多数同時に実行したい場合
- リソースを節約したいとき
例えば、Webサーバーでは1リクエストごとにスレッドを生成することで高いパフォーマンスを実現しています。逆に、クラッシュ対策が必要なバックエンド処理ではプロセスの方が適している場合もあります。
マルチプロセスとマルチスレッド
現代のアプリケーションでは、「マルチプロセス」や「マルチスレッド」という形で並列処理を取り入れるのが一般的です。
マルチプロセスの特徴
- プロセスごとに独立性が高く、障害に強い
- 通信にはコストがかかる(IPCなど)
- リソース消費が多くなりやすい
マルチスレッドの特徴
- メモリ共有による高速な通信が可能
- リソース効率が良く、高パフォーマンス
- 不具合の影響がスレッド全体に及ぶリスクがある
実際には、両者を組み合わせて効率と安定性を両立させる設計も多く採用されています。
まとめ
プロセスとスレッドは、OSやアプリケーション開発において重要な概念です。
それぞれの特徴と使いどころを理解することで、より効率的で安定したプログラム設計が可能になります。
本記事を参考に、プロセスとスレッドの違いをしっかりと理解し、目的に応じた適切な手法を選んでください。